月読ツクヨミ。この名は日本神話の中の夜を統べる神として、アマテラスとスサノオと並び三神と数えられる。といってもこの曲は神様・月読命(つくよみのみこと)を描いたわけではない。
僕の作曲は見た景色や体験からメロディが浮かび(これを採集と呼んでいる)、それを持ち帰って構築していくことが多い。この曲のモチーフを採集したのは鎌倉の夜の海辺で、凪いだ海面に満月が漂っているのを見たとき。2つの月が眼前にあり、波によって揺れる海面の月は空の月よりも光彩を放っていた。それはまるで空に静かに浮かぶ月が水を得て波と風に煽られ、隠していた狂気が目を覚ましたような、そんな光景だ。昔から人は月に魅せられ、歌を詠んだり、額に収めてみたり、月を描いた音楽も数多くある。これは僕にとっての月を読んだ作品なのである。

